ブランディングについて様々な解説書が出ていますが、私はシンプルに
「ブランド(or 商品)を好きになって、選んでもらうようにするための一連の行為」と定義しています。
たとえば食品を例にとると、商品を店頭で手に取る時の情報(パッケージや価格など)以外に
今まで蓄積されたその商品のイメージが頭の中に浮かんでくると思います。
その情報は経験の中で何となく入って来て、ある漠然としたイメージが作られます。
ブランディングは、その何となく入る情報をコントロールしてお客様にいいイメージを持っていただき
好きになって商品を買ってもらえるようにする、という行為なのです。
ブランディング用語の中で「タッチポイント」という言葉があります。
それは顧客がブランドに接するポイントをさし、その機会全てで好意を抱いてもらえるようにするわけです。
サービス業なら、商品だけではなく店員の服装や接客態度、お店の雰囲気も含まれます。
ということで、ブランディングはデザインだけのことではありませんが
デザインはブランディングの重要な要素で、人は7割以上の情報を視覚から得ると言われています。
「ブランデザイン」ができることは、ブランド価値を高める"魅力"を、デザインの力で創り出すこと。
ロゴのデザインはもちろんのこと、それ以外のデザインも重要だと考えています。
ブランドとは
説明が前後しますが、そもそもブランドとは…
ブランドとは「焼印をつけること」を意味する brander から派生したといわれています。
牧場で飼っていた牛に焼印をつけたことがブランドのはじまりです。
日本語では商標ともいい、企業が販売または提供する商品やサービスについて
他企業や競争相手と区別するために使用する名前、象徴、デザインなどを総称したものです。
ブランドにとって大切なのは、その本質である「顧客に対する価値の提供」です。
価値は大きく分けて機能的価値(商品やサービスそのものの品質)とイメージ的価値があり
顧客はその価値に対してお金を払い、ファンになり、自ら友人に宣伝してくれるわけです。
デザインはイメージ的価値を作る上でとても重要な役割を果たします。
CIとブランディングの違い
混同して使われているケースがあり、その違いをご説明いたします。
CIは "Corporate Identity"の略で、企業理念とそれに基づく行動指針を共有することで
より良い企業活動を行おうとする企業戦略です。1930年代にアメリカで始まりました。
企業文化を構築し統一されたイメージ作りを行うため、その象徴としてマークやロゴを策定しました。
"Identity"は独自性 、自己、自分らしさの意味で、"Corporate Identity"はその企業独自の姿ということです。
アメリカで生まれた背景として、人種や教育、宗教など様々な人々が集う社会で
統一した考えやマニュアル化されたデザインが必要となったと考えられます。
CIは以下の3つの領域からなり、マークやロゴなどのデザインは "Visual Identity"と呼ばれています。
MI:マインド・アイデンティティ "Mind Identity"……理念の統一
BI:ビヘイビア・アイデンティティ "Behavior Identity"…… 行動の統一
VI:ビジュアル・アイデンティティ "Visual Identity"……視覚の統一
また企業は "CI"ですが、商品はブランド・アイデンティティー "BI"、お店はショップ・アイデンティティー "SI"
大学はユニバーシティー・アイデンティティー"UI"と呼ばれました。
日本では1970年代に導入されはじめ、80年代になるとバブル経済の影響を受け「CIブーム」が起り
90年代にかけ様々な企業が導入しました。カタカナの社名が増えたのもこの頃です。
私が初めて参加した三菱銀行のCIは81年に始まり、ニューヨークのCI会社がデザインを開発しました。
大学を出たばかりで何も分からなかったのですがとても勉強になり
その後多くの企業のCIを担当させていただきました。
ブランディングは2000年頃を境に新しく登場した戦略概念です。
CIと大きく異なる点は、その元となる視点が企業側か顧客側かというところです。
CIは自分たちはどうあるべきかという企業理念(顧客視点も含まれますが)を基にしたものですが
ブランディングは顧客の視点から発想したコンセプトや理念をベースに
常に顧客の期待や信頼に応えるよう行動し、良質な商品やサービスを供給することで
「顧客にとっての価値」を最大限高めていくことです。
最近のロゴデザインの傾向として小文字が多いのは、この消費者迎合指向の結果だと思われます。
近年、CIという言葉は "Visual Identity"の意味合いが強く
"マークやロゴのデザイン"として使われることが多くなっているようで
CIはブランディングの一部に含まれると考えるのが自然です。